Aki's Diary

日々の生活で思ったことなど

民法508条のルール

1.条文

まずは条文を確認する。

民法508条(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には,その債権者は,相殺をすることができる。」


2.機能局面

次に,同条が機能する局面を考える。
そこで,たとえば以下のようなケースを想定する。

まず,XがYに対して金銭の支払いを求め訴えを提起した。
これに対して,Yは相殺の抗弁を提出した。
この相殺の抗弁を受けてXは,Yが相殺に供した自働債権は時効期間が経過しているとして,消滅時効の再抗弁を提出した。

このとき,Xの消滅時効の再抗弁は容れられるか否かという形で,民法508条が機能する。


3.民法508条のルール(含 判例法理)

以上を前提として,民法508条の規律内容について検討する。

まず,同条が定める「消滅」とは,時効期間の経過を意味する。

したがって,① 相殺時において,たとえ自働債権につき時効期間が経過していたとしても,② 時効期間経過前に相殺適状が生じていた(受働債権の弁済期が到来していた)場合には,民法508条により相殺をすることができる。

換言すれば,相殺の抗弁に対する消滅時効の再抗弁が容れられるには,自働債権の時効期間経過後に受働債権の弁済期が到来したこと(受働債権の弁済期到来前に時効期間が経過したこと)が必要となる(以上につき,最判平25・2・28民集15‐2‐343)。

なお,自働債権及び受働債権の弁済期到来については,請求原因及び抗弁の段階で明らかになることが多く,再抗弁段階で新たに主張立証を要する場面は稀であると思われる。


4.機能局面の検討

最後に,3でみたルールに則して,2のケースを簡単に検討する。

たとえば,Xの請求債権(受働債権)の弁済期到来が平成24年,Yの自働債権の弁済期到来が平成15年かつ時効期間経過が平成25年であった場合,時効期間経過前(平成24年)に相殺適状が生じていたといえる。したがって,民法508条によりYの相殺の抗弁は容れられ,Xの消滅時効の再抗弁は主張自体失当となる。

これに対して,上記の場合でXの請求債権の弁済期到来が平成26年であったときは,時効期間経過前に相殺適状が生じたとはいえない。したがって,民法508条の適用はなく,Yの相殺の抗弁に対して,Xは消滅時効の再抗弁を提出できる。

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以上につき,岡口基一要件事実マニュアル1【第5版】」(ぎょうせい:平成28年)703・704頁を参照。なお,同書籍を本ブログでは以下「岡口・要件事実1」という(2~5も同じ)。