Aki's Diary

日々の生活で思ったことなど

【書評】新問題研究 要件事実

1.はじめに

 週末は実家に戻る予定でしたが,諸般の事情で帰れなくなってしまったので,秋の夜長に書評を書いてみることにしました。
 今回レビューをするのは,当ブログで先にも触れた,【司法研修所編「新問題研究 要件事実」(法曹会,2011年9月。以下『新問研』)】です。
 「私のような者が書評を書いても良いのだろうか?」と思いもしましたが,新問研については相応に読み込んだ自負もあるので,今回レビューを書くことにしました。
 このブログを閲覧された方々にとって,参考になるところがあれば幸いです(なお,以下の記載が私の独断と偏見に基づくものであることは言うに及びません)。
 また,本記事について何か気付いた点がありましたら,コメント頂ければ嬉しいです。

2.新問研とは

 新問研とは,司法研修所民事裁判教官室*が,「法科大学院の学生をはじめとして,これから要件事実についての考え方を学んでいこうとする人のために,典型的な訴訟物及び攻撃防御方法に関する基本的な事例について,当事者双方の言い分を記載した具体的事例に即して,要件事実についての基本的な考え方を平易に解説する」(同書はしがき)というコンセプトの下で作成された教材です。

 要件事実の入門教材として,法科大学院の授業でテキストとして指定されることが多く,司法試験に合格し司法修習生となる者に対して,司法研修所から送られる一式の教材(いわゆる『白表紙』)にも含まれています。
 市販もされていて,法律を勉強する人ならば,多くの人が1度は手にしたことがある本だと思います。

 * 司法修習では,① 民事裁判,② 民事弁護,③ 刑事裁判,④ 刑事弁護,⑤ 検察,という5科目について研修があります。そのうちの1科目である民事裁判を担当する先生たち,といえば分かりやすいでしょうか。ちなみに,民裁教官は,ある程度経験を積んだ判事が担当します。

3.教材としての性格

(1)入門書

 まず,本書は要件事実の入門書として,いわばインプット用の教材として用いられます。要件事実を学ぶに当たって必要最低限の知識・理解を修得するため.本書を用いる人は多いです。

(2)演習書

 また.本書は演習書.すなわちアウトプット用の教材としての性格も有しています。本書を作成した民裁教官室は.むしろこのような使われ方を想定しているといえます(冒頭3頁の「この教材の使い方」参照)。

4.レビュー

(1)総説

 まず,民裁教官室が作成した白表紙教材ということもあり,記述の信頼性は抜群であり,この点は他の追随を許さないといえます。
 また.本書の旧版である,いわゆる『旧問研』と比較して,「実体法について様々な解釈があることを意識したもの」(同書はしがき)となっており,記述の客観性にも優れています(判例を除き出典の明示はありませんが,入門テキストとしての性格上その弊害は殆どないといえます)。
 そして,ですます調による,条文や判例を基点とした平易な解説は,読んでいて非常に分かりやすく,論旨明快さ,理解のしやすさという点でも非常に優れています。

 つまるところ,要件事実の入門教材として,本書以上のものはないといえます。

(2)指摘される点

 しかしながら,本書については,次の点が指摘されることもあります。

 まず,情報量が少ないという点です。
 たしかに,本書では,要件事実の中でも比較的メジャーな分野である,代理,保証,債権譲渡,代物弁済,相殺,法定解除,不当利得,不法行為,相続などの分野については取り扱われておらず,他の教材等で補完する必要があります(いわゆる30講や類型的など)。
 しかしながら,「要件事実についての基本的な考え方を平易に解説する」という本書のコンセプトに照らせば,この点は必ずしも短所ではなく,過多な情報量は基本分野を見えにくくするおそれもあるということを考えれば,むしろ取扱分野が限定されているのは長所とすらいえます。
 したがって,情報量の少なさという点は,必ずしも本書の短所であるとはいえないと思います。

 次に,理由付けが十分でない,いわゆる行間を読む必要に迫られる,という点が指摘されることもあります。
 たしかに,判例・通説が採用する見解や実務上の運用について,なぜそのような見解が一般的に採用されているのか,なぜ実務上の運用がそのようなものになっているのか,ということについて理由付けが欠落している部分もあります(たとえば,冒頭規定説や主要事実説の採用,不動産登記訴訟における実務上の運用など)。この点についても,必要に応じて他の教材で適宜補完する必要があります。

(3)使い方

 さて,本書の使い方ですが,本書に2つの性格があることは先述しました。本書を作成した民裁教官室としては,演習書として用いられることを期待しているようです。
 もっとも,要件事実について全く学んだことがない人が,いきなり問題演習に取り組んで学習効果があるのかといえば,少し考えてしまいます。

 そこで私としては,本書を2度通読するのが良いのではないかと思います。
 なお,通読と聞くと何やら大変そうに聞こえますが,本書は本文で140ページちょっとしかなく,しかも字が大きく,図や記載例も多く掲載されているので,読むこと自体に時間はそれほどかからないと思います。

 まず,1度目は本書を入門書として,要件事実の基本的な知識・理解を修得するためのインプット用の教材として通読します。ここでは知識・理解の修得に主眼を置きます。
 次に,2度目は本書を演習書として,1度目の通読で修得した知識・理解の確認のためのアウトプット用の教材として通読します。すなわち,「この教材の使い方」に忠実に従って,全ての問題に取り組みます。

 このように本書を用いることで,本書の効用をマックスにすることが出来ると考えています。

5.おわりに

 新問研は多くの受験生・修習生が用いる教材ですが,その用い方は必ずしも一様ではないように思います。
 私のレビューが,本ブログを閲覧された方に対して,少しでもインスピレーションを与えることになれば幸甚です。





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【おまけ】

 書評って初めて書いたけど,思ってたよりすごく難しい。
 考えたままに勢いで書いちゃったけど,こんなんで大丈夫なのかな、、、。